人と働き方を知る
渡邉 菜穂子
企画・開発
入社年度2003年 中途入社
所属部署電子マネー事業本部 認証サービス開発部 ID利用サービス開発グループ
出身学部学科生活環境科学部 人間科学講座
Suica電子マネー化の立ち上げメンバーとして活躍
前職はソフトウェアハウスのSEとして、POSレジ開発に携わっていましたが、電子マネーに興味を持ったのをきっかけに、2003年当社に中途入社しました。といっても、Suicaがコンビニや自販機でつかえるようになる電子マネー化が始まったのは2004年なので、Suicaの鉄道利用は認知されていたものの、まだ電子マネーというビジネスで役立つかどうかは未知の状態の「電子マネー黎明期」でした。当時のSuica電子マネー化の立上げメンバーは、私を含めてたった6人。開発も、営業も、トラブル対応も…電子マネーに関わるすべての業務を少人数でこなしていかなければならない大変さがありましたね。

それから2年後ぐらいには「電子マネー検定」の制定に関わりました。非接触ICカードの処理って独特で、その特性を理解して開発しないと誤収受のような大きな障害に繋がるんです。自らいくつかの端末開発を経験する中で、大手メーカでも必ず同じような設計で躓くことも分かってきました。そのノウハウをガイドラインやチェックシートという形にして、開発された端末がそれを満たすか確認するのが「電子マネー検定」です。この制度によって、今、世にある全ての電子マネー端末は皆さんが安心して使っていただけるレベルにあります。
ターニングポイントはMBA取得による知識の深化
経験知だけでなく、理論知を高めるという意味では、5年ほど前に国内留学でMBA(経営学修士)を取得させていただいたことが大きいですね。電子マネーを極めるうえで、金融法務の知識が必要になるだろうということで経営法務分野もあるビジネススクールで学びました。電子マネーをより便利に安全にご利用いただくための環境づくりとして、個人情報保護法などの既存の法制度だけでなく、規制の整備がどのように行われるかなどを知ることができました。
実は、先にお話しした電子マネー検定をクリアするには、なかなかのコストや期間が必要で、電子マネー市場への参入障壁と苦言を受けることもあったのです。Suica拡大の足かせを自ら作っていることに矛盾を感じながら、こういった制度が市場やビジネスに影響を持つことは解っていたのですが、それが転じて、企画や開発よりもさらに上流のフェーズから、つまり法規制を押えることでビジネスの根幹や新たな利用法を発想するという考え方の軸ができました。
それらを知識として体得できたことは、その後の新規事業の発想を膨らますのにも役立ったと思います。この時の知見がきっかけで、当社の新規事業のひとつであった認証サービスの企画に関わらせていただくことになりました。それが、2017年に実用化がスタートしたクラウド型ID認証システムの開発へと繋がっています。
今後のICカード活用の進化を担うシステムに挑む
「クラウド型ID認証システム」とは、ICカード活用の進化を担う新たなサービスです。ID認証機能を活用して、地域サービスや情報配信など交通系ICカードのさまざまな使い方を実現するもので、鉄道利用や電子マネー決済にとどまらず、より多彩なジャンルでICカードを利用できるようになります。また、媒体もICカードに拘らず、QRコードや生体認証といったもので代替えができます。そんな構想が始まったのは2010年でしたが、2017年春にシステムの開発を終え、デジタルチケットサービスの実証実験が実施されました。構想からローンチまで実に7年。長かったですね(苦笑)。社会に大きな影響を及ぼすシステムを扱っている組織だけに、なかなか速度感を持って業務を行うのは大変なのですが、「世の中を便利にしたい」という思いを実現できるソースをあちらこちらに持っている会社でもあります。電子マネーが生活の道具として定着した今、新しい発想を持った方たちに、新しい認証サービスの可能性を追求してもらいたいですね。私もこれまでの経験知と理論知をこれからも活かしながら、新たなチャレンジを続けていきたいと思っています。





※所属部署は取材当時のものです