仕事と人を知る
 
那珂研究所ITERプロジェクト部遠隔保守機器開発グループ
入構 年度平成25年度
現在の部署名那珂研究所ITERプロジェクト部遠隔保守機器開発グループ
卒業学部・学科理学部理学科卒(学部)、エネルギー科学研究科修了(大学院博士前期課程)、エネルギー科学研究科単位取得退学(大学院博士後期課程)
志望動機を教えてください。
大学在学時、核融合に興味を持ち、大学院はエネルギー科学研究科に進学しました。大学院では、マイクロ波を用いてプラズマを加熱し核融合反応を起こす研究に携わり、核融合への興味がより強まったことから、QSTを志望しました。
現在携わられているお仕事の内容を教えてください。
私の業務は、一言で言うと「核融合実験炉『ITER(イーター)』の保守ロボットの開発」です。核融合は、二酸化炭素を放出せず、安全性が高く、燃料もほぼ無尽蔵であることから究極のエネルギーとして注目されています。ITERは、そのようなエネルギーの実証を目的としてフランスで建設されている核融合実験装置で、現在様々な国の協力体制のもと開発が進められています。
ITERは、非常に大きな核融合実験装置で、中身はドーナツ型のプラズマを生成する真空容器です。その中には「ブランケット」と呼ばれる重要な部品が存在しますが、放射線環境下で人が入れないため、ブランケットを保守するためのロボットを開発しています。
保守ロボットに関するお仕事について詳しく教えてください。
保守ロボットの構造上の特性として、振動の伝わりやすさが挙げられます。大きな課題となってくるのが、地震の影響です。地震が起こった際のロボットの挙動や、地震動の影響を緩和するための対策など、地震への対応を含めた開発が欠かせませんので、その構造設計を担当しています。
また、保守ロボットにはブランケットを冷やすための水を通す配管や、大きなボルトが付帯していますが、配管溶接・切断・検査やボルト締結に用いるツールは一般販売されているものでは対応できません。そのための様々な技術開発が必要であることも、この仕事ならではだと思います。
お仕事の中で心がけていることは何ですか?
ITERは各国が国際協力しながら進めていく超大規模プロジェクトです。開発を進めていくためには、他者との円滑な連携が欠かせないので、プロセスを確認しながらの先を見据えた行動を心掛けています。一方、本や論文からの知識のアップデートや、最新のソフトウェアのチェックなどの情報取得を怠らないよう気をつけています。
お仕事におけるやりがいを教えてください。
次世代エネルギーの開発に向けた取組である「ITER」。超大規模プロジェクトに携われることそのものが、非常に大きなやりがいとなっています。私たちの研究開発がITERプロジェクト全体の成功の鍵でもありますし、さらには原型炉、その先の商用炉開発にもつながっていきます。次世代エネルギー創出の土台となる研究開発といった意味で、非常に重要な役割を担っているため、誇りを胸に仕事に取り組んでいきたいです。
お仕事を進めていく中で感じる難しさを教えてください。
この仕事は国際協力プロジェクトであることから、ITER機構や他国との協議も重要な業務の一つです。コロナ禍以前は現地出張などもありましたが、現在はテレビ会議で毎週担当者の方々と議論を行っており、各国とのコミュニケーションや調整に難しさを感じています。最大の理由は、各国の言語や文化の違いにあります。会議は全て英語で行われますが、私に限らずITER機構の方々は英語を母国語とする方ばかりではなく、バックボーンも様々です。そのため、「暗黙の了解」などは通用せず、「何月何日までに誰が何をする」としっかり決めておくことが欠かせません。また、各所の状況や優先順位が異なり、落とし所を見つけていく必要があるため、調整に苦労しています。
QSTならではの環境のよさはどんなところにあると思いますか?
ITER向けのブランケット保守ロボットの開発は、QSTでしか行われていません。ITER向けブランケットは約4トンもあり、それ程の重量物をハンドリングする巨大ロボットの研究開発に携われる環境そのものが、魅力的だと思います。
加えて、QSTには個人の多様性を尊重し、意見にしっかりと耳を傾けてくれる環境があると実感しています。そうした点は日々の働きやすさにつながっています。
今後成し遂げたい夢や目標を教えてください。
入構以来、私は保守ロボットに関する業務を行っていますので、まずはその開発を完遂させたいと考えています。現時点のスケジュールでは、2029年にITER機構で保守ロボットが運転可能になっている必要がありますので、これに合わせて開発を進め、納入し、現地のITER機構のオペレーターをトレーニングするまでの使命を果たしたいです。そして、これまでの経験を生かしながら、その後に続く原型炉開発、商用炉の実現に向けた技術開発に携わっていきたいです。