仕事と人を知る
 
那珂研究所先進プラズマ研究部先進プラズマ実験グループ
入構 年度平成28年度
現在の部署名那珂研究所先進プラズマ研究部先進プラズマ実験グループ
卒業学部・学科工学部 機械知能・航空工学科卒(学部)、新領域創成科学研究科修了(大学院修士課程)
志望動機を教えてください。
学生時代はプラズマで半導体を作る研究を行っていましたが、プラズマへの見識をより広げたいという思いから大学院へ進学しました。大学院で得られた核融合研究開発の知識や経験を生かしたいと考えたことに加え、東日本大震災で被災した経験からエネルギー問題にも興味があったため、入構を決めました。
現在携わられているお仕事の内容を教えてください。
那珂研究所では核融合発電の実現に向けた『JT-60SA』と呼ばれる「超伝導トカマク装置」の運用を行っており、私の所属する先進プラズマ研究部ではJT-60SAに取り付ける計測器の研究開発・保守運用を行うと共に、プラズマの生成・維持・制御する仕事を行っています。現在、世界各国が協力して『ITER(イーター)』と呼ばれる核融合実験装置をフランスで建設しています。JT-60SAは、ITERの支援と原型炉に向けた補完研究として高性能・高圧力のプラズマ生成実験を行い、その成果をITERや原型炉に反映することを目的として作られた装置です。
研究職は物理を明らかにし、新しいものを生み出す仕事ですが、私は技術職として、研究をサポートするために必要な道具や装置を設計・開発・管理しています。
技術職のお仕事の内容を詳しく教えてください。
研究者の方々はJT-60SAに取り付けた計測器から得られた情報を使ってプラズマや核融合炉の研究開発を行っていますが、光、粒子や電磁場などの計測対象に応じ、利用する装置は多種多様です。一見、各装置は全く異なるものからできているように思われますが、実はそうではなく、装置の中身をひとつひとつ分解していくと、共通の技術要素が見つかります。設計意図を含めてそうした技術仕様をまとめていくことが、運用、信頼性やコストの面で重要です。私たち技術職はこうした共通化・標準化の作業を行いながら、将来の核融合炉設計の効率化につながるよう、強度確認、組立方法を含めて検討する業務を行っています。
お仕事の中で大切にされていることは何ですか?
入所前に先輩から受けたアドバイスそのままですが、“研究開発業界は死ぬまで勉強“ということで、情報を吸収し続ける姿勢を大切にしています。核融合炉は全体としてみれば、今までこの世に無かった全く新しいものです。私たちは、業務の中で起こりうる様々な事象に備えて、物事を多角的に見て気付いていかなければなりません。ノウハウを生み出すためだけでなく、装置の健全性を守るためにも、自分の周囲にある専門以外の分野にも興味を持って、理解しようと努力しています。何かに気が付くため、学び続けることが大切だと感じています。
お仕事におけるやりがいを教えてください。
那珂研究所における仕事は、実際に手を動かすことが多いと感じています。例えば装置の仕様決定の際には、ボルト一本まで自分で適切なものを選び、表面処理まで指定することもあります。また、ある程度のものであれば自分たちで組み立てを行うこともあります。そうした仕事の中で、 “こんなこともあろうかと”と先を見据えて設計したものが役立つと、大きなやりがいを感じます。自分の手を動かしたからこそ理解できることもありますし、そこで「おもしろいな」と興味が湧くことも多々あります。実際にやってみることで自身の視野も広がっていきますから、今後も積極的に手を動かしていきたいと思っています。
お仕事を進めていく中で感じる難しさを教えてください。
JT-60SAの内部は、宇宙と同じくらいの超高真空状態となっています。加えて超伝導コイルによって、MRIと同程度の強磁場が存在する特殊な環境です。また、超伝導コイルを冷却し保温するための4K~80Kという極低温や、超高温のプラズマからくる熱など、様々な環境条件を考慮した装置を設計しなければならないところに、仕事の難しさがあります。また、核融合装置全般に言えることではありますが、狭い空間の中で精度よく、様々なパーツを知恵の輪のように組み立てていく必要もあります。たくさんの事象が重なる中で、最善を考えていかなければならないため大変ではありますが、そこに仕事のやりがいがあると感じています。
QSTならではの環境のよさはどんなところにあると思いますか?
QSTには、自分の専門分野だけではなく、全く異なる分野の方々が大勢在籍しています。例えば、核融合は考慮しなければならない数多くの事象があると先ほどお伝えしましたが、その事象の多さゆえ、各専門分野の方が一堂に会しているような職場です。そんな方々から直接その分野のおもしろさや難しさなどを聞くことができるのは、得難い環境だと思います。
また、JT-60SAは日本とヨーロッパの共同研究プロジェクトでもあるため、ヨーロッパの方々から海外の最新情報や知識を聞くことができるのも、大変ありがたいです。JT-60SAが那珂研究所にあることで、日本が情報のハブ拠点となっており、メリットは大きいのではないでしょうか。
今後成し遂げたい夢や目標を教えてください。
東日本大震災で被災した当時、私は大学1年生でした。ボランティアには参加していたものの、ニュースを聞いたり支援を受けたりするだけで、非力さを痛感しました。その経験から、いざという時のためにも自分の専門性を高めて頑張りたいと思うようになりました。核融合は世界の新たなエネルギー源の1つとして期待されており、持続可能な社会の実現という点から、社会貢献の一助としての夢があります。“昔は良かった”ではなく、“こんなに素晴らしい時代になって良かった”と思えるような世の中になるように、核融合実現に向けて今後も努力していきたいと思います。